2022年度学部・大学院共修「比較政治」


[授業科目の概要]

1 概要

 この授業では、おもに先進諸国の政治と政策を体系的に比較し、現代政治を分析する視角と日本に関する深い理解を獲得することを目指します。なぜ平等を重視する国と市場の自由を重視する国に分かれているのか? グローバル化は各国にどのような影響を与えているのか? 雇用や社会保障のあり方はどう異なるのか? 少子化が進む国とそうでない国の政策の違いは何か? すべての国で極右政党が伸張しているのか? これらの問いを、政治制度、労使関係、政党システム、社会運動、リーダーシップといった政治学および比較政治経済学の分析視角を用いて考察します。

2 到達目標

(1)先進国の政治経済の基本構造を理解し、その中で日本の特徴、長所と問題点を把握すること。
(2)比較を通じて政治学の分析方法に習熟し、それらを用いて現代のトピックを分析できるようになること。

[他の授業との関連]

 基礎科目「政治学」「政治思想」の内容を踏まえ、諸外国と日本の現代政治に焦点をあわせた発展的な内容とします。ただし、これらの授業を一部しか受けていなくとも理解できるよう配慮します。また「社会政策」「国際社会学」などの隣接分野とも関係があります。

[授業の内容]

 前半では、先進国の政治を大きく「レジーム」という観点から比較し、現在までの違いを検討します。後半では、政策トピックごとに各国の違いとその背景を比較検討します。また各回ごとに政治学の概念や方法を決め、事例分析をつうじてそれらを習得できるよう配慮します。

1 オリエンテーション
2 比較政治の理論と方法
3 先進国の戦後レジーム@ブレトンウッズ体制とフォーディズム
4 先進国の戦後レジームAスウェーデンとイギリス
5 日本の戦後レジーム
6 グローバル化と国内政治
7 戦後レジームの再編@スウェーデンとイギリス
8 戦後レジームの再編A日本
9 グローバル化と格差
10 労働市場の二分化
11 少子化と家族政策
12 ポピュリズムと排外主義
13 先進諸国の政治的対抗

[テキスト]

 政治学、比較政治の基礎文献をリーディング・アサインメントとして一部抜粋します。詳細は検討中ですが、下記のようなテクストの20〜30頁程度が候補となると思います。

久米郁男『原因を推論する』有斐閣、2013年
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学』有斐閣、2020年
粕谷祐子『比較政治学』ミネルヴァ書房、2014年
宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年
田中拓道『福祉政治史』勁草書房、2017年
水島治郎『ポピュリズムとは何か』岩波新書、2016年

[授業時間外の学習]

・毎回20頁程度の教科書をリーディング・アサインメントとして指定します。前もって目を通したうえで、授業ビデオを視聴してください。授業ビデオは毎週火曜、金曜に配信されます。アサインメント、ビデオはgoogle classroomを用いて配信します。

・ビデオを視聴したら200字程度のコメントペーパーを提出してください。

・コメントペーパーを出席点として集計します。授業の第1回〜3回分、第4回〜6回分、第7回〜9回、第10回〜12回分に分けて集計しますので、期日までにコメントの提出をお願いします。

[成績評価の方法と基準]

(1)コメント(10点×4)
授業ビデオの中で示された質問へのコメントペーパーの提出を義務とする。全13回のうち4回分(不定期)を集計する。

(2)学期末レポート(60点)
学術論文のルールに則っているか、授業で扱った理論を用い、独創的な仮説を立てて立証しているか、等を基準に採点する。テーマと字数、レポートの書き方、採点基準は初回の授業で説明する。

以上の合計で60点以上をCの目安とし、単位取得者の1/3がA、Aの1/3がA+となるよう相対評価とする。

[受講生に対するメッセージ]

・政治・経済・社会を横断する高度な内容ですが、一人一人が日本と世界の将来について自分なりのビジョンを作り、政治について深く考察することができるよう努力します。

・完全オンデマンド講義ですが、毎回のコメントペーパーに対し、次の授業でフィードバックを行うことで、双方向の授業となるよう工夫します。